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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.235 埃だらけの詩集

椿
「椿」水性ペン


 本箱の上の段の一番奥の埃をかぶった文庫本、手垢にまみれて縁が少しめくれている。
数え切れぬほど手にとって読んだ本、角川文庫 現代詩人全集 第十巻。
はるか昔に一つ一つの言葉を噛みしめるように読んでいた。
今扉を開けると、好きだった詩が昔と変わらず赤茶けた紙に印刷されている。


根府川の海    茨木のり子

根府川
東海道の少駅
赤いカンナの咲いている駅

たっぷり栄養のある
大きな花の向こうに
いつもまっさおな海が広がっていた

中尉との恋の話を聞かされながら
友と二人ここを通ったことがあった

溢れるような青春を
リュックにつめこみ
動員令をポケットに
揺られて行ったこともある

燃えさかる東京をあとに
ネーブルの花の白かったふるさとへ
たどりつくときも
あなたは在った

丈高いカンナの花よ
おだやかな相模の海よ

沖に光る波のひとひら
ああそんなかがやきに似た
十代の歳月
風船のように消えた
無知で 純粋で 徒労だった歳月
失われたたった一つの海賊箱

ほっそりと
蒼く
国を抱きしめて
肩をあげていた
菜ッパ服の小さいあたしを
根府川の海よ
忘れはしないだろう?
女の年齢を増しながら
ふたたび私は通過する
あれから八年
ひたすらに不敵な心を育てて






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