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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.223 僕のおじさん(5)

農道の秋
「農道の秋」 水彩 F6



 おじさんは囲碁が好きだった。私も子供の頃に父が教えてくれたので碁をやる。所沢に越して来てだいぶんたった頃、おじさんが仕事の帰りに我が家に立ち寄り、碁を打つた。それがきっかけで、土日には時々電話があって我が家で囲碁をした。そんなある金曜日に碁が打ちたくなって電話をした。
「この土日碁を打つ?」
「わしも打ちたいんじゃが、わざわざ昌彦の家に行くんじゃガソリンが勿体ない。立川のお風呂屋に仕事で行く時だけだ。わざにゃあ行かん。明日は暇じゃけえ昌彦が家に来るんなら打つぞ」
と言う。それで私がおじさんの家まで碁を打ちに出かけることになった。我が家は仕事のついでがある時だけだった。

 常日頃から商売はいいぞ!と言っていたおじさんは、二人の子供を結局商売人に仕立て上げた。上の女の子は薬学部を卒業して薬屋をしている。下の男の子は獣医学部で学んで動物病院の経営をしている。
 下の子は獣医学部を卒業してインターンが済むと間もなく、独立して動物病院を開業することになった。しかし東京でだから土地は高いし建物の費用もバカにならない。でもおじさんは息子になんとか開業をさせたいと思ったのだろう。考えた末に親戚に資金の援助を手紙で頼んだ。
私の父母がその手紙を読みながら話をしていた。
「頑張っているから偉いな。少し助けてあげにゃいかんな」
と投資信託を解約して援助したらしい。
 他の父の兄弟たちもそれぞれに援助をしたと言う。それで下の子はまだ若くして、独立して動物病院を経営することができた。
 おじさんの率直なお願いの手紙に、兄弟親族のかなりの人たちが協力しようと思ったのだった。

 我が家でのおじさんの評判はイマイチだった。特に私の母はあけすけなおじさんの言動や振る舞いを嫌っていた。姉ちゃんたちも広島帰省の列車事件のあおりで嫌がっていた。
でも私は昔からおじさんが好きだった。
正直で率直だった。自分を隠したり着飾ったりする様子は全くない。もちろん嘘はつかない。人に親切で、意地の悪いところが全くなかった。
「わしはべっぴんが好きじゃ」と公言して女学生だった叔母さんを嫁にして、生涯大事にしていた。そのおばさんもおっとりとして優しい素直な人だった。
 おじさんは10年ほど前に亡くなった。
5年ほど前に85歳を超えたおばさんと30年ぶりに私の個展会場で再会した。動物病院の従兄弟が車でおばさんを連れて来た。
 おばさんは上品で綺麗な老婦人になっていた。昔話に花が咲いて、おばさんが嫁に来るときのことを話してみた。するとその話はほとんど知らない様子だった。それに気づいて、私は遠慮してその話は少しだけにした。おばさんは楽しそうに
「ほっほっほ〜」、
と笑って聞いていた。
僕のおじさんは幸せな人だったなと思った。




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