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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.222 僕のおじさん(4)

葉桜の頃
「葉桜の頃」 水彩 F6



 一家で東京に越して私は大学を出て就職をした。24歳の時に結婚をした。おじさんに仲人を頼んだ。新居は西武線の鷺宮駅近くの木造アパートだった。上石神井は近くだから、おじさんとはよく顔を合わせていた。時々呼ばれて夕食をご馳走になったりしていた。
 前後の記憶がないけれど、何かの機会におじさんと鷺宮の駅で落ち合った。
「コーヒーをご馳走するけえ、喫茶店に行こうや」
と言う。駅の踏切のすぐ近くに時々行く喫茶店がある。そこへ入った。ウエイトレスが注文を取りに来た。ホットコーヒーを二つ注文をした。コーヒーが運ばれて来て、ウエイトレスがステンレスのミルクポットを手に
「ミルクを入れますか?」
と聞いた。僕は入れないと断った。おじさんはミルクを入れると言う。ウエイトレスが注ごうとすると
「自分でやるけえ、それを置いといてくれ」
と言う。ウエイトレスは怪訝な顔をしてそれを置いて帰った。
 おじさんはコーヒーに砂糖をスプーン3杯入れてかき回した。そしてポットからなみなみとミルクを注いだ。それをカップに口を寄せて「ズズズ〜」と音を立てて飲んだ。半分ほど飲むとまた砂糖を入れてミルクを注いで飲んだ。結局大きなミルクポットはすっかり空になった。
「わしはこうするのが好きなんじゃ。ミルクはタダじゃけえ、飲まにゃあ損じゃ」
とニコニコと満足そうな顔をした。
私はその喫茶店にはその後足が遠くなった。

 また別の時だったか、これも前後はよく記憶していない。暑い盛りにおじさんの軽自動車の助手席に乗った。青梅街道を走っていたのだろう。路側に車を止めて
「アイスクリームを二つ、あそこの店で買うてこい」とお金をくれた。交通の激しい道だったから、急いで買って車に帰った。おじさんはすぐに車を走らせ、
「先に食べええ、わしのはそのダッシュボードに置いといてくれ」
と言う。
「溶けちゃうよ」
「ええんじゃ」
と言う。私はアイスクリームを先に食べた。食べ終わる頃に
「昌彦、わしのを蓋を開けて木の匙でかき回して見てくれ」
と言った。だいぶん柔らかくなって来ている。その様子を運転しながら見て
「もう少しじゃな」
と言う。しばらくしてもう一度かき回した。ドロドロに溶けていた。するとおじさんは
「ちょうど美味そうになった」と道端に車を止めてそれを美味そうにズズズ〜と吸い込んだ。
「いや〜、うまいもんじゃ。こうするのが大好きじゃ!」
とニコニコしていた。

 おじさんに仲人をしてもらったので、盆暮れにお中元とお歳暮を欠かさず送っていた。おじさんのところにはコーヒーセットを送っていた。何種類かのブランド銘柄の豆を挽いたものとクリープなどがセットになっている。お中元を送ってしばらくしておじさんから電話がきた。
「昌彦、いつもお中元やお歳暮をありがとう。いいコーヒー豆を送ってもらっているんじゃけえ、わしは安いインスタントの方が好きなんじゃ。勿体ないけえ、同じ値段のインスタントコーヒーのセットに変えて欲しいんじゃ」
おじさんはあっけらかんとそう言う。私はおかしくなって思わず笑ってしまった。それを家内に言うとやっぱり笑っていた。
 次のお歳暮からはインスタントコーヒーのセットにしたけれど、安いからずいぶんたくさんになったと家内は言っていた。







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脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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