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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.213 幼稚園中退

紅葉の名栗川
「紅葉の名栗川」水彩 F6



 故郷の内房の大貫町に幼稚園ができた。突然母ちゃんが僕をそこへ入れると言う。母は真剣だった。1キロほど先の幼稚園まで、嫌がって抵抗する僕の手を握りしめて、町の通りを引きずって行った。木造の古びた建物は鉄道の土手下にあった。
 海や川で気ままに遊び呆けていたから、幼稚園の女の先生が手取り足取り面倒を見てくれるのが毎日鬱陶しかった。半年ほど我慢をして通っていた。
 ある日、クリスマスで演じるキリスト生誕の踊りと劇の練習をさせられた。紙で作った帽子や服を着せられて、「キラキラ星が〜」と歌いながら踊らされた。その踊りを無理強いされて僕は怒っていた。自尊心が傷ついた。

「クリスマスってなんだ? キリストなんて知らねえぞ。なんでそんなことを無理強いするんだ。馬鹿馬鹿しい!」
 
 とうとう僕は先生の目を盗んで脱走した。土手の草むらをよじ登って線路の上を走って逃げた。広い空は青く澄み渡って、雲が浮かんでいた。心地よい海風が吹いていた。嬉しかった。
家に帰ると幼稚園から連絡が入って、母ちゃんにひどく叱られた。でも僕は幼稚園には絶対に行かないと決心していた。
 翌日の朝、母ちゃんはすごい顔で僕の手を握って引きずって行った。駅前の通りで僕は猛烈に暴れて叫んでいた。延々そうやって抵抗した。とうとう母ちゃんは諦めて僕を投げ出した。
それから小学校に入学するまで、僕はまた海や山で自由に遊びまわっていた。

 あれから60数年後の私は、四人の孫たちとよく遊んだ。お気に入りは川遊びや「水雷母艦」と言う鬼ごっこのような遊びだ。相撲やキャッチボール、狭山丘陵での虫取り、回り将棋や凧揚げ。ダンボールでの土手滑り。なんでも一緒に本気で遊ぶ。
ある時一番下の女の子が
「おじいちゃんは子供みたいだね」
と言う。
「そうだ。幼稚園を卒業してないからまだ子供だよ」
と言うと孫が目を回して
「そうなんだ!幼稚園楽しいのにどうして行かなかったの?」
と驚いていた。孫は幼稚園が大好きだった。
運動会の時に孫が友達に私を紹介をした。
「私のおじいちゃんだけどね、まだ子供なの」
友達は怪訝な顔をして私を見ていた。

私の自慢は大貫幼稚園中退なのだ。



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プロフィール

脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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