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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.202 奇妙な遊び

猛暑緑陰2
「猛暑緑陰」 水彩 F6


 小学校の頃に小さな蜘蛛を喧嘩をさせる遊びが流行った。フンチという1センチほどの黒光りをする蜘蛛だ。この蜘蛛を持ち寄って、昼休みに喧嘩をさせて勝敗を楽しむ。手のひらを土俵にして二匹の小さい蜘蛛が土俵入りの不知火型のように両手を上げて睨み合って、やがて激しく組み合って喧嘩をする。しばらくもみ合っているうちに負けた方が逃げ出す。勝った蜘蛛は負けた蜘蛛をそれ以上は追わない。勝負アリなのだ。みんな大事に育てた蜘蛛を次々と持ち出して勝ち抜き戦をする。

 その蜘蛛を探すのに夢中になった。大きくて黒光りをするのはオスの蜘蛛だ。メスは茶色い地味な色をしている。晴れた日の新緑の槇の葉の上で日向ぼっこをしている。捕まえると桐の飼育箱に入れておく。タバコの箱ほどの大きさで、2センチ角の小部屋が作ってあり、その上にスライド送りの蓋があった。その中に綿を敷いてそこにフンチを入れる。この桐の箱は近所の雑貨屋で売っていた。
 
 蜘蛛の餌は生きた蝿だ。蠅叩きでは潰れてしまうし、ハエ取り紙というやつが天井から吊るしてあったけれど、これも剥がすときに潰れてしまう。
 だから停まっているハエを傷つけないように手で捕まえる。これが難しい。夢中で朝から晩までやっていると、しばらくすると簡単にできるようになった。ハエはそこら中に飛んでいた。
 この生きた蝿を箱に入れてやると、自分の体ほどもある蝿を美味しそうに食べる。水もやらなければならない。小指の先に唾きの泡を作ってそれを蜘蛛の目の前に差し出すと、その自分の体ほどの泡に頭をつけてそれを飲んだ。
 冬は蜘蛛が凍えないように懐にその箱を入れる。春先に脱皮する。すると一回り大きくなる。そして頃を見てみんなで持ち寄って蜘蛛合戦をする。人と同じで大きい方が強いとは限らない。

 今考えると大人たちは奇妙な遊びに夢中になっていた。
この蜘蛛合戦は江戸時代の昔から私の育った内房の大貫付近でやっていた遊びで、大人は賭けをやっていたという。
 その頃、一番すごかったのは、駅近くの空き地で大々的に行われた闘犬だった。近郷近在から檻に入れられた土佐犬が運び込まれた。木の枠で囲われた土俵で大きな土佐犬が唸り声をあげて血だらけになって噛み合う。怖かった。横綱大関は綺麗な化粧回しをして出場した。周りで大人たちは酒を飲んで観戦をして賭けをする。
 闘鶏もやっていた。赤いトサカに黒光りのする羽が綺麗だった。喧嘩をするとすざましい叫びをあげて足の爪で戦った。羽が空中に飛び散る。一度だけ見た記憶がある。
 鶯や雲雀を捕まえて飼育をして、春になると近郷近在で持ち寄って鳴き比べをしていた。この鶯を山に捕まえに行ったことがある。
 まずは鳥黐を作らなければダメだ。庭にある黐の皮を剥がしてそれを石で潰し水で丁寧に洗って樹脂を取り出す。ネバネバしてガムのようだ。それから鳥籠で飼われている鶯を借りてきた。それを山の木の枝に吊るしておく。その近くの小枝の下に鳥黐を這わせておく。そしてだいぶ離れた場所のガサ藪に身を潜めてじっとしている。
 やがて籠のウグイスが囀り出す。息を殺して何時間待っていただろうか?山のウグイスが鳥籠に近づいてきた。鳥黐を這わせた枝にそのウグイスが止まった。異常に気づいて飛び立とうとして足がくっついて飛び立てずに、小枝にコウモリのように逆さにぶら下がってしまった。
 この光景は鮮明に記憶している。誰と行ったのか、大人が一緒だったのか周辺の記憶はない。
どれも江戸時代から続く大人の遊びだったらしい。

 フンチの喧嘩遊びは東京湾を渡った対岸の横須賀でもやっていたという。横須賀ではホンチというらしい。他では聞いたことがない遊びだった。私の子供時代に流行ったのを最後に絶えてしまったのだけれど、最近隣町の富津でフンチ愛好会なるものができて、蜘蛛合戦が復活しているという。

 当時の大人たちはいろいろな遊びを生活の一部にして楽しんでいた。それを見ると江戸時代の庶民の豊かさが分かる気がする。文明とは遊びそのものなのだ。






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脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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