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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.193 船を作る 

水路の夏「水路の夏」F6 水彩


 海岸の背丈が低い防風林は海から、遠ざかるほどに背丈が高くなり下は密集した笹薮に覆われていた。その笹薮の中を暫く掻い潜ると突然四角い小さな池に出た。人家や道からも遠く離れ全く人気はない。偶然に見つけたのだ。キヨちゃんと僕はここで密かに船を作ろうと思った。船に乗って海で遊ぶのは、僕らの夢だったからだ。
 まずは池のほとりの薮を払った。そこに父ちゃんの大工道具を少しずつ運び込んだ。家の裏にある古材や廃墟になった別荘のはめ板も剥がして運び込んだ。

 設計図もなく行き当たりばったりの船作りだった。尖った船首は難しいので箱舟にしたが、それでも船首は少し細くようと思った。授業中もそのことばかり考えていた。帰宅すると毎日秘密の造船所に通った。。難題はオールとオールの指示軸だったが、苦労の末なんとか作り上げた。そして最後は水が漏れないように板の隙間にシュロ縄をドライバーで押し込んだのだった。完成したぞ、進水式だ!と僕らは興奮した。

 池に船を浮かべて僕は飛び乗った。すると底板から水が噴き出してまたたく間に沈没して、浅い池の底にぶつかった。僕はずぶ濡れになった。板の隙間に機械油や蝋燭を垂らしても水は漏れてしまった。
 ちょうどその頃町で初めての舗装工事が始まっていた。それを見ていて、「水止めはこれだ!」と直感した。コールタールを少し失敬した。それを温めて柔らかくし、細い紐状にして底板の隙間を丹念に埋めた。
二回目の進水式は上出来だった。「やったー、完成だ!」僕らは小躍りをして喜んだ。

 本当の進水式は海だ。でも海までは松林や砂山を超えて1キロは有る。それに船は意外に重くて二人では運べない。いつの間にかもう秋風が吹いて、海も寒くなっていた。でも早く海に浮かべたい。秘密はもうやめにして、二人の仲間に頼んで四人で船を運んだ。
 
 海は少し風が吹いて波立っている。満潮だった。浅瀬に海苔の養殖の竹が一面に立っていた。その竹林を避けて進水することにした。今度はキヨちゃんの番だ。僕はキヨちゃんが飛び乗った船の後ろを強く押し出した。船は少し荒い波間に見事に浮かんで進んでいった。風が強くなって波立ち、船は竹林の方に流され出した。「おーい!そっちは危ないよ」キヨちゃんは必死にオールを漕いだけれど、とうとう海苔の養殖の竹林の中に突っ込んだ。船底を竹に突き上げられて、転覆した。キヨちゃんは海に投げ出された。

 それから1年ほどの間、僕たちは天気の良い穏やかな日は、その船で何度も沖に釣りに出た。漁港の中を面白くて漕いで回った。2キロ先の堤防まで船で渡り、遊んだ。
 普段は岩瀬川の河口の茂みに隠して係留しておいた。でも皆んなに知れ渡って、留守中に何度も無断で乗り回されて、とうとう無残にも壊れてしまった。






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プロフィール

脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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