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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No227 堤防の菜の花

堤防の冬
「堤防の冬」 水彩 F6



 奥武蔵から流れ出た名栗川や高麗川は入間川となって、川越の北を回り込んで荒川に合流する。そのあたりは広々とした平地が広がり、そこにいく筋もの支流や水路が交差している。その多くの堤防は広々として眺めも良く、絵を描き始めた頃からよく通っている。この絵は冬の穏やかな日の枯れ草の中で描いた。

 春はこの堤防の斜面は一面の菜の花に覆われる。風は菜の花の香りでむせ返るようだ。
その花芽を摘んでマヨネーズをつけてサンドイッチで食べたこともある。

 この間、久しぶりに川越に遊びに出かけた。蜂蜜を売っているお土産屋があった。
そこの店主曰く
「自宅の菜の花畑で採れた蜂蜜です。美味しいですよ」
という。試食するとクセがなくて美味しい。
黄色の菜の花に囲まれた自宅の写真が貼ってある。堤防下の見覚えのある光景だった。
 
その美味しい蜂蜜を今日も紅茶やコヒーに入れて飲んだ。菜の花の頃にまた描きに行こうと思う。





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No.226 青い海に消えた(1)

初秋の八海山
「初秋の八海山」 水彩 P15



 キヨちゃんは6年、僕は5年生になった。だからどうなったかって?別に何も変わったことはなかった。
4月になって校庭の桜が満開になって、海風の中に花びらを次々に散らしていた。紫色の花影には半透明の白い花びらが一面に敷き詰められていた。授業が終って校門からランドセルを背負って、僕たちはそれをそっと踏みしめて歩いた。風がそよいで雪のように花びらが散り落ちてくる。顔をあげると、町の瓦屋根の向こうに、青い海とその先の紫色の三浦半島が見える。
キヨちゃんが聞いた。
「潮は引いてるかな?」
「今日は早引けだからまだ大丈夫。アサリを掘ってみよう」
坂を下って鄙びた町の通りを横切って、笹薮の茂みの小道を抜けるとそこは海だった。
広い砂浜の上に小さな波紋を残して、海は遥か遠くまで引いていた。途中で拾った竹の棒で砂を掘ると砂利に混じって幾つかの小さいアサリが取れた。
僕が言った。
「ちっちゃいけど、明日はアサリ掘りしよう」
「え〜、それよりもっと面白いことないか?」
とキヨちゃん。
相変わらず母ちゃんの期待が大かったので、よくアサリ掘りをしたり地引網を手伝って魚をもらって帰った。でもアサリ取はあまり面白くない。
 最近は父ちゃんの会社の給料が支払われるようになって、母ちゃんはヒステリーは起こさなくなった。
キヨちゃんは言った。
「隣のクラスの白井がグラグラ橋でセイゴを釣ったぞ」
「へ〜、あれは引きが強いし跳ねるから面白いよな」
「うん、3匹だぞ!」
「俺セイゴは一度も釣ったことないよ」
「釣り方わかんね〜から、ヤッちゃんに教えてもらおう」
 翌日の土曜日学校でヤッちゃんを誘って、3人でグラグラ橋に行った。五月の暖かい日だった。
岩瀬川の河口を少し遡ると両岸が小高い台地になっている。ちょうどその辺りを内房線の赤い鉄橋が跨いでいる。川の両岸は木々が生い茂っていてグラグラ橋はその真下に木々に隠れて架かっていた。古材を寄せ集めて繋ぎ合わせた板を、両側の川岸に立てられた支柱で支えただけの欄干もない橋で、歩くたびに上下に揺れる。大人が上ですれ違うのは難しかった。鉄橋の手前の土手を降りて、下の密集した家の狭い路地を抜けて草付きの斜面を下ると橋のたもとに着く。
 ちゃんとした橋は河口と一キロほど上流に架かる2本だけでどちらも遠回りだから、ここは近所の知っている人だけがが使っていた。僕たちの秘密の通学路にもなっていた。
 学校の裏門近くの踏切から、線路を歩いてそのまま鉄橋を渡るのが一番近道だ。でもそこを通るのは学校で禁止されていた。鉄橋は思った以上に長く、枕木の間からずっと下に岩瀬川が見える。恐々と渡るので時間がかかる。ある日そこを渡っていると、後ろからいきなり汽笛が聞こえた。少し先で線路が大きくカーブしているから、すぐ近くまで気がつかない。
「いけねえ!」
慌てて向こう側に渡って土手下の草叢にころげこんだ。その横を激しく汽笛を鳴らしながら機関車が轟音を響かせて走り抜けて行った。
翌日学校に行くと、
「線路を通るなって注意したばかりなのに、またやった子がいる。誰だ!」
と厳しく詮索された。黙っていたけれど、クラスの連中は僕の方をチラチラ見ていた。
学校に通報が来たらしい。でも鉄橋がダメでも手前で土手下に降りればグラグラ橋があったから、僕はよくそこを渡っていた。

 午後に満潮になって、潮の臭いのする濁った水は川幅一杯に広がり逆流していた。
「錘は小さくして、ゴカイは針に引っ掛けて長くたらしておくんだ」
ヤッちゃんは、橋のたもとから釣り糸を川に投げ込んだ。僕とキヨちゃんも並んで竿を降り出した。












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No.225 井上井月

真鶴漁港

「真鶴漁港」 水彩 P15



 井上井月については前にも2度書いた。時々句集を読む。種田山頭火や中村草田男の俳句に比較すると、平易な句が多い。
しかしそれが妙に魅力的なのだ。なんだろうと思う。
年賀状は毎年返信だけを出す。今年もその余白をどうして埋めようかと思いあぐねて、結局井上井月の句集をめくった。
そこから気に入った四句を拾った。

・たちそこね帰りおくれて行く燕
・あぶなげな富は願わず紙衾
・魚の寄る藻の下かげや雲の峰
・落ち栗の座を定めるや窪溜まり   井月

 第一句は物悲しく優しい眼差しを感じる。第二句はそのままの生活をしている井月の揺るぎない覚悟を思わせる。言葉だけで飾っているのではない。第三句は足元のささやかな美と雄大な美をこの少ない言葉で見事に対比させて魅力的だ。第四句はこの中に私自身を重ねて読んでいる。
 
 どの句も、生きている思いや実感をなんの衒いもなく表現している。そして寸分も違わぬ生き方をしている誠実さをここから感じる。それが井上井月に惹きつけられる理由だろう。





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プロフィール

脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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