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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

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No.92 腑に落ちない

朝潮運河「朝潮運河」F6


 このところ、隅田川沿いの浅草、佃島、月島にスケッチに屡々出かける。高層ビルが林立するようになったが、その間に昔の侭の木造や錆びたトタン張りの古い民家が多く残っている。路地には良く手入れをされた植木鉢や花があり、洗濯物が干されている。運河にはダルマ船や漁船、モーターボートが浮かんで水に揺らいでいる。そんな風景に惹かれて通っている。
 先日の日曜日は乾燥した気持ちのよい晴天であった。前日に思いついて、スケッチの支度をして朝早く月島を目指して家を出た。帰りに久し振りに駒込駅前のS君の家に行こうと思った。彼とは40年来の付き合いである。少しご無沙汰すると「何時遊びにくる?」と頻繁に電話が来る。若い頃は随分乱暴な遊びもしたが、このところは鰻重や寿司を食い、カラオケのはしごをする程度だった。40年の波乱の人生をともにしたので、何の屈託もなく寛げ、馬鹿を言い合える。その彼とも新年以降会っていない。電話も掛かって来なかった。帰りに寄って、空手形の特上鰻重を御馳走になろうと思った。
 月島の運河でスケッチをして、昼に寿司を食った。安くて旨い。やはり食は下町である。地下鉄で汐留に渡りJR新橋駅から山手線に乗って、駒込駅で降りた。駅前の商店街を抜けて線路沿いの静かな古びた住宅街が彼の家だ。木造の格子戸から中を覗くと、廊下のガラス戸も玄関の扉も開けてある。格子戸の呼び鈴を3度押して待ったが、応答がない。背伸びして部屋を見ると、何だかいつもと違って奇麗に片付いている。彼女と同居することになったか?と思った。
まさかね~と思いながら、裏のお兄さん夫婦の家を訪ねた。ちょうど表にいた顔見知りの兄嫁に「S君お出かけですか?」と訪ねた。訝しそうに私を見てどなたですか?と聞く。名のると思い出したのか、ああという顔つきをして「3月に亡くなりました」と言った。
「亡くなったんですか?3月に!」と言いながら頭の中で引き算をした。なんと3ヶ月前ではないか!!
 私はしばらく言葉を失って、兄嫁の顔を見つめていた。漸く思い出したように「どうしたんですか?」と聞いた。2月24日の夜に発作を起こして緊急入院、一週間後にその病院で亡くなったという。私は内心しまった!もっと早く訪ねてくるんだったと悔やんだ。4ヶ月も電話がないのが少し気になっていたのに、忙しいのにかまけていた。
 そのまま帰ろうか?どうしようかと迷ったが「線香上げたいのですが?」と言うとアッそうかという顔をして、兄嫁は自宅から鍵を持って来て案内してくれた。汚れて散らかって足の踏み場もなかった彼の部屋は、見違えるように奇麗に片付いて、ふすまも張り替えてあった。見慣れた母親の仏壇があった。私は遊びにくると必ずお線香を上げていた。そこに彼の遺影は見当たらない。どうしようかと思って躊躇していると、兄嫁は慌てて戸棚を探して、小さな写真を仏壇に載せた。S君はいつもの人なつこい顔でニコニコしている。私は線香を上げて、それに向かって手を合わせたけれど、妙な気分だった。そして彼の思い出話を少しして、アルバムから彼の写真を一枚頂いてすぐに辞去した。
 帰宅してから何だか腹が立って来た。隣同士で犬猿の仲であったの知っていたが、どうして連絡してくれなかったのか?
 かれこれ一週間が経つが、気持ちの整理がついていない。悲しみではなく、なんだかふわふわと頼りない気分がするばかりである。「ほら、あいつはな!あの時本当にバカしたんだよな」「そうそう、あれはないよな!」と代名詞で何でも通じる仲間を失ってしまったのだ。40年来の共通体験の全てがそうやって語り合えた。この穴は余人では埋められない。そう!寂しいのだ。何だかいまだに腑に落ちない。


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脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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