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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

No.69 越生黒山

越生黒山


 越生は梅林で有名である。しかし以前に訪ねてみたが、そのわりには小じんまりとしたものであったので、早々に引き上げてしまった。
 今年の3月になってスケッチ会の下見を兼ねて、あらためて訪れて絵を描いた。その折にゆっくりと巡ってみると、この越生の谷は存外に魅力的であった。周囲の山とその間を蛇行する越辺川沿いに梅林と民家が散在して、静かで自然な感じがする。
 調べてみるとこの梅林の歴史は古く、1400年頃に作られたと言う。室町時代である。それ故に江戸時代にも広く知られていて、規模は小さいにもかかわらず知名度が高いのだと思う。ちなみに越生を加えて関東三大梅林といわれる他の二カ所の水戸梅園は1842年、熱海梅園は1886年に作られたと言うから、この越生梅林は格段に古いものであった。
 この地は江戸城を造ったことで知られる、太田道灌(1432年~1486年)の領地であった。この越生の谷の奥の龍ヶ谷にある龍穩寺には、太田道灌父子の墓がある。立ち寄ってみると大きく立派な寺であった。
 室町幕府は足利の有力な一族を公方に任じて、関東を治めさせていた。しかし道灌の活躍していた当時は、堀越公方と古河公方が関東を二分して争っていた。関東管領としての名門上杉氏も、扇ヶ谷上杉家と山内上杉家に別れて、それぞれ堀越公方、古河公方に組して覇権を争っていた。太田道真、道灌父子は扇ヶ谷上杉の家宰として28年間戦い抜いて、劣勢であった主家扇ヶ谷上杉氏を優勢に導き、その実力と名声は関東に知らぬものが無いほどになった。道灌は和歌たしなみ、文武に秀でた武将であり「七重八重 花はさけども山吹のみのひとつだに なきぞ悲しき」の話は、太田道灌がこの地に父親を訪ねた時のことであると言う。1486年、太田道灌は主人である上杉定正によって殺害される。太田道灌の実力と名声を恐れた故と言う。これにより太田一族や家臣の多くが上杉を離れて、間もなく扇ヶ谷上杉家は滅んでしまう。
 思うに室町時代は下克上の始まった時代であった。「朝廷」は権威で「室町将軍」を任命して政治をゆだね、その「将軍」は関東の場合は「関東公方」に委任し、それは更に「関東管領」の上杉にゆだねられ、上杉は家宰である太田家に実務をゆだねていたのである。此の秩序が根底から覆され、上下が転覆し始めたのが室町時代である。仮に太田道灌が殺されずにいたら、最も早く戦国大名に成長し、関東の雄として北条氏と肩を並べていたと思う。
 越生の梅林が出来たのもこの時代である。太田道灌父子もこの梅林を戦の合間に愛でたのかも知れない。
 この越生の谷の最奥部に黒山三滝がある。その入り口付近に梅の花に囲まれた、小さな全洞院という寺があった。戊辰戦争の時に、飯能の能仁寺に立てこもって戦った振武軍の参謀であった渋沢平九郎が、ここで官軍に捕まり斬られたと言う血染めの岩がある。飯能から逃れて顔振峠を経て此の黒山に降りてきたところを、官軍に捕われて斬られたのだ。胴体だけがここに埋葬されたらしい。明治財界の父と言われたあの渋沢栄一の養子であったという。
 この全洞院のすぐ前の町営駐車場の隣に「ディーゾンネ」と言う洒落た喫茶店がある。ここで昼食を食べた。「古代米のドライカレー」が上品で味わいが深い。レアーチーズムースはオレンジピールが散らしてあり香ばしく、これも逸品。ここのママの手作りで、そのセンスの良さが知れる。
 冒頭の絵は、その地から少し下った部落を描いたものである。未だ冬の装いの中に梅が咲いている。絵を描いていると近くの家のお婆さんがやってきて御茶に誘ってくれた。陽の当たる縁側で、81歳になるというお婆さんの昔話を聞いた。ここに嫁に来るときは越生の駅から7キロの道のりをリヤカーに道具を積んで、花嫁衣装で歩いてきたと言う。電気もなくランプだったそうである。60年程前のことだ。
 帰りは農産物売り場で「芋柄」を見つけ、買って帰った。水で戻し鶏肉と油揚げを加えて、醤油と酒とみりんで味付けをして炒めて食べた。旨い! 7年程前に近所の方にいただいて食べた時以来の、生涯二度目の体験であった。


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プロフィール

脇 昌彦

Author:脇 昌彦
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