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脇昌彦の水彩絵日記

折々に思い感じたことを記した絵日記

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No.60 巡りくる春

新緑の小道
  「新緑の小道」 F6

 先日ある人が私に話した。桜がすごく奇麗だったと食卓で賑やかに話していたらそれを聞いていた孫に
「桜のことをなんでそんなに騒ぐの?大騒ぎする程奇麗じゃないと思うよ」
と言われ
「あのね、あと何回見れるか分からないのよ。おばあちゃんの年になれば貴方にも分かるわよ」
と答えると
「え~、そんな!おばあちゃん大丈夫だよ。まだまだ何回だって見れるよ」
と孫に慰められたとその人は嬉しそうに笑っていた。
 どちらも思い当たる気持ちであった。私も最近よく「あと何回食べられるか分からないから」とそう言って旬の美味しいものを食べる。「あと何回見ることが出来るか?」と言って美しい景色を見に行きそこにイーゼルを立てて絵を描く。
 しかし、じつのところ良く振り返ってみると自分はいつまでも生き続けると無意識に思っている節がある。他人の死は現実的だけれど自分の死は非現実的だ。だからそれを言い訳にして贅沢をしているのかも知れない。
 4月と5月は毎年巡ってくるけれど、その度に理屈抜きに心から美しいと感動する。桜以外にいくらでも美しいものはある。それを静かに味わいたいと思う。



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No.59 懐かしき「ボンガトウ」

 山手線の大塚、巣鴨、駒込駅の北側の界隈は今でも人の匂いの濃厚な下町である。
 大学1年の頃都電荒川線の西河原4丁目駅近くの借家に住んでいた。空襲で焼けずに残った古い街並みで、近所は震災の頃に移転してきた寺院が多くあった。近くの寺にお岩さんの墓があり、四谷怪談を演ずる役者がお参りに来た。お参りを忘れると祟りがあると言う。小さなマーケットがあちこちにあって活気があった。都電の線路に面して間口一軒程のラーメン屋とその隣にやはり小さな床屋があった。ここのラーメンと焼きそばが旨いので義理の兄は大田区からわざわざ食べに訪れた。隣の床屋に私は毎月通った。ここの娘が西田佐知子に良く似た美人だった。顔を剃って貰いながらよく彼女の顔を薄目で盗み見て、胸をときめかせた。一度巣鴨駅のホームで見かけて、互いに会釈したのが最後だった。その後すぐに大田区の上野毛に転居したからだ。
 就職して間もなく職場の組合活動をしているS君と知り合った。彼はその後激しい労働運動の渦中で翻弄されて精神を病んで退社した。長い間音信不通であったがその後10年程してあるきっかけで再会し、以後彼と行き来するようになった。そのS君の家は駒込駅の北側にある昔からの豆腐屋である。だからこの界隈は馴染みが多く買い物の都度店先で立ち話に興じている。S君に案内してもらって巣鴨のとげ抜き地蔵に2回行った。
 つい最近もS君と駒込界隈で食事をして、その後近くの洋菓子屋の喫茶部で珈琲を飲んだ。美人三姉妹が店を切り盛りしている。彼はここの常連で、その姉妹とレジで世間話に興じていた。そのとき私は菓子の包装紙を見てその店の名が「ボンガトウ」であるのに気付いた。その途端に36年程前にタイムスリップした。
 結婚して長男がまだ2歳の頃大田区の京急梅屋敷駅近くに住んでいた。そこに「ぼんか堂」というケーキ屋さんがあった。よちよち歩きの長男を連れて買い物途中に良くそこを訪れてケーキを買って帰った。奥さんは恰幅の良い働き者で気風の良い人で、旦那はやせて背が高くチョビ髭を生やしていた。旦那は平和島競艇に夢中で、その話になると商売そこのけで長くなった。長男はそこで何時もお菓子をもらった。その近くの八百屋ではバナナを貰い、馴染みのラーメン屋の前を通ると余ったチャーハンを包んで貰った。そのケーキ屋さんの名は「ぼんか堂」だとばかり思っていたが、梅屋敷を後にして5年程して何かの拍子に「ボンガトウ」、つまりフランス語の「良いお菓子」だと気付いた。

 ここはその梅屋敷の洋菓子店と同じ名前だった。
「大田区の梅屋敷に同じ名前の洋菓子屋さんがあったけれど、支店じゃないですか?36年程前ですけど」
「へ~そうなんですか?支店じゃないですよ。家はここ一軒ですから」
テキパキ愛想よく接客してくれていた姉妹はそう言いながら奥に入って行った。暫くして戻ってきた。
「母に聞いたら同じ名前の洋菓子屋さんが梅屋敷にあったのを知っているそうです」
「え~そうですか?随分良くしていただいて懐かしい店です。お店も良く似ています。今もあるかどうか、何しろ随分昔ですから」
 
 その「ボンカドウ」のアップルパイをお土産に貰って帰った。家内とその頃のことを思い出しながら素朴で後味の良いアップルパイを食べた。この味は下町の懐かしい人情の味だ。この原稿は「ボンガトウ」のレモンケーキを食べながら書いている。

東京都北区中里2-2-4 「ボンガトウ」;アップルパイがお薦め、素朴で美味しい下町の味です。


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No.58 私のバルビゾン村

農道新緑
 「農道新緑」 F80

 狭山丘陵、小手指ヶ原とそこから西に続く台地は早春になると鑞梅や紅梅、そして福寿草と白梅が咲き出す。そしてその後を追うように枝垂れ梅、花桃、レンギョウ、三つ又、辛夷、染井吉野、木蓮が咲いていく。やがて茶褐色であった雑木林が芽吹き始めて、言葉では言い表せない微妙な色に変化する。そして瞬く間に柔らかな黄緑の若葉で覆われてしまう。
 この頃台地を散策すると新緑の雑木林に囲まれた茶畑があり、それを美しく彩るように大根の花やタンポポが咲いている。身近な風景が魂をとろかせる程魅力的になる季節である。
この自然の魅力に勝るものを私は知らない。美は自然の中にしかないのだと思う。
 この絵は8年程前に自転車で近所に描きに出かけF6で描いたものをもとにして、F80号の作品に描き直したものである。
 バルビゾン派の画家達は身近な自然の中に美を見つけて描いた。この小手指の台地、狭山丘陵とそれに連なる奥武蔵は、私の言わばバルビゾン村である。



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プロフィール

脇 昌彦

Author:脇 昌彦
水彩画廊 suisaiga.jpを是非御覧ください。



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